学生時代にしてた仕事が頓挫したのでここで日の目を見させる

いつも暗い文章を書いているでお馴染みのわたしです。

パソコンのデスクトップが汚い(フォルダを作らずにいる)から、整理しようとおもってたんだけど、学生時代に少しだけ大学の仕事をしていて、それが結局大学側の担当者の都合で頓挫したので、ここにupしようとおもいます。

学生時代の仕事といっても、リケジョをもっと増やそう!みたいなコンセプトの仕事で、一応理系大学院生だったからそのような仕事をしてました。

 

で、頓挫したのはあるメディアに投稿しようとしてた自分の分野に近い内容の書き物で、人に伝える、自分の分野外の人たちにもなるべくわかってもらおう、みたいな意識を生ませてくれたのはこの仕事だったので、それをこのまま死なせるのは少しかわいそうなので、ここで日の目を見させようとおもいます。

 

----------------

 

祝!ノーベル生理・医学賞受賞の本庶先生の開発した抗PD-1治療薬「オブジーボ」が実際に使われるまで20年?

 

 

(自己紹介文)〜わたしは大学院で「乳癌治療」について、in vitro(試験管内の、という意味のラテン語、つまり細胞レベル)で研究を行っています。

 

さて、2018年10月にノーベル賞が発表されましたが、生理・医学賞を受賞された本庶佑先生が見つけたPD-1は、がん治療において新しいジャンルである免疫療法を生んだ革新的な「免疫チェックポイント阻害薬」の開発に繋がりました。

がん治療は手術による切除、放射線治療、化学療法の3本柱で何十年も行われてきました。そこに新たなジャンルとして登場した免疫療法は、わたしたちのカラダが持っている免疫力を、がん細胞が生き延びるために低下させている原因を解明し、その免疫力を薬剤によって元に戻してがん細胞を壊滅させることが目的の治療法です。

前者3つががんを物理的に取るか、直接外から攻撃して殺すか、という戦法を取っているのに対し、免疫療法はわたしたちが持っている免疫力をがん細胞が低下させているのを、抗PD-1治療薬「オブジーボ」などの免疫チェックポイント阻害薬によって高めて、わたしたち自身の免疫力でがん細胞を殺すという2段戦法を取っています。これは本当に画期的な発見であり、今後どんどんこの免疫療法に用いる新薬は開発されていくだろうと考えられています。

 

みなさんはオブジーボが実際の患者さんに投与できるようになるのに、どのくらいの年月がかかるのかご存知でしょうか?

まず本庶先生とその研究グループがPD-1を見つけ、それを発表したのは1992年、その後1999年にPD-1ががん細胞が免疫から逃れるために利用しているシステムだと解明され、それをターゲットにする治療薬の開発が始まりました。

そして、オブジーボが販売開始されたのは2014年です。つまり、PD-1発見から20年、その治療薬を開発して実用化できるまでは15年間かかったということが分かります。

この新薬開発というのは、様々なステップを踏むほか、薬ができても既存の似た作用の薬よりも効果がなければ、日の目を見ないという、超激ムズ関門をクリアしないと新薬として実際に患者さんに投与されないのです。この激ムズ関門は「臨床試験」(治験)といい、治験には複数のステップが存在しています。

治験は3ステップあり、健康な人に投与して副作用が酷くないか?→少人数の患者さんに投与してみて効果があったのか?→大人数の患者さんに投与して効果があったか?という順番で行われます。そもそもなぜ時間がかかるのか、というと、「この薬は効果がある」と主張するためには、患者さんがどれくらい長く生きたのかを評価するのであれば、(病気の種類によりますが)長く時間がかかってしまうという理由があります。それぞれのステップごとに長くて5年くらいかかることもあるため、新薬が世に出るまで非常に時間もかかるというわけです。

 

また、新薬開発には莫大な資金も投入されます。治験を進めることにもお金はかかりますが、実はその治験の前段階、「非臨床試験」においても資金は多くかかります。この非臨床試験は、新薬候補をまずin vitro(冒頭でも述べたけど、ラテン語で”試験管内で”という意味、つまり「細胞を使って」ってこと)レベルで探し当て、その後にマウスにその新薬候補を投与し、病気の状況が改善したかどうかを調べることを言います。うちの大学の医学系研究科で創薬研究をしている研究室では、このような実験をしているイメージですね。

なぜその人に投与する前段階の実験でお金がかかってしまうのか?という点ですが、わたしが大学院で研究していても感じることで、実験に使う試薬や道具というのは、全くもってお財布に優しくない値段であるため、それを新薬候補である”種(seeds)”を見つけるところから始めると、もう本当にお金がかかるだろうな、というのは想像に容易いです。そして時間も沢山かかる、かからないわけがない。

余談ですが、だから本庶先生も大隅先生も「基礎研究にお金をかけなければならない」って言っていたんだろうな、と思います。ほとんどはin vitroレベルの基礎研究から始まるといっても過言ではないです。トライアンドエラーを繰り返し、種(seeds)である当たりを見つけるのは本当に骨が折れることです。その当たりがひいては、全人類に利益を運ぶ可能性だってあるので、ギャンブルな資金投入だとしても、研究者たちを信じてもらわなきゃ困るんだ!という風にイッパシの理系院生は思うのです。

 

今回はオブジーボを例に、新薬がわたしたちの手元に届くまでをお送りしました。時間とお金がかかることだけでも知ってもらえたらうれしいです。

 

 

----------------

 

どう考えても、理解できなくない?笑

難しいよね、噛み砕き方がわかんないんだわ〜って感じでした。でもこう、わからないをわからないままにせず、自力で調べていく子たちには何かのキッカケになってほしいなって、ワガママだけど願っていたんだな〜。

実際、自分のしてた研究には愛着があったし、いい研究だなってのもおもってたので、こういう感じで文章にして伝えてみようっておもったのでした。

おしまい。