叱る
わたしは幼い頃、よく母親に叱られていた。
大人になってから聞いたけど、当時の母はすこしヒステリックで、姑とか色々な部分でノイローゼ気味になっていたから、八つ当たり的な部分もあったらしい。
まあでも叱られた記憶はあるけど、嫌な気分になったとか理不尽だったとか、そういうところは感じていなかったのかわからないが、忘れているから、わたしって単純で良かったな~とおもう。
わたしはいま大学院の1年生だ。
大学院には修士課程と博士課程があり、前者は2年、後者は修士課程をおさめてからまた最低3年で号が取得できる。
わたしは前者に所属しているのだけど、研究室には2人の学部4年生がいる。つまり後輩だ。
学部生のとき、わたしは部活をしていたけど、週1の激ゆるサークルだったし、学部2年の途中入部だったから、実質1こ下の後輩とは同期のようなものだった。
だからかわからないけど、学部の性質上、学年は下だけと年齢は同じってのは自然なこともあって、後輩とわたしの関係はとてもフラットだった。なめられてる、ともいうけど。
そういう背景もあって、しっかりとした後輩というのは久しぶりで。
敬語つかわれるのもくすぐったいし、わたしが色々教えたりするのも、こいついつもヘラヘラしてるのに真面目かよっておもわれるのかなとか、なんかほんとうに後輩という存在に慣れていなくて面白い。
間違っていることを注意することや、考え方としてこちらが良いというアドバイスをすることですら、わたしは躊躇してしまう。
お節介おばさん、とおもわれないだろうか、口うるさいお局だな、と嫌がられないだろうか。
そんなこと考えているうちに、なんか面倒くさくなってしまい、彼らが間違った方向へと進もうとしても知らん顔したり、良くない態度を取っても許してしまう。
ああ、わたしには人を叱る素質がないんだなあとおもう。
だから、人の上に立つ素質もない。
下の者を正しい道へとうまく導くことの難しさを感じる。 どうやったらうまくできるのか、ほんとうにわからない。
やはり嫌われることを覚悟で言うしかないのだろうか。 でもそれって、わたしが一番避けたいことじゃん。
そうこうしてるうちに実験の待ち時間が終わる。
自分の中でぐるぐる考えるよりも、ほんとは行動に移すべきだとおもうんだけど。 腰が上がらない。
行かなきゃ。