珈琲
珈琲を飲む。
朝、研究室に行くと、仲良しの先輩が淹れてくれている。 研究室のあるフロアの廊下を歩いていると、珈琲の香りがしてすこしだけこころが浮かぶ。
甘いのが得意でないから、ミルクも砂糖もいれずに、ブラックで飲む。
最初は飲めなかったけど、いまは飲めるようになった。 味覚がどんどん劣化している証拠だなあ、とおもう。
わたしにはまだ珈琲好きの友人がいない。 珈琲を飲むために、喫茶店やカフェへ行く友人いないという意味だ。
なんだかそれはさみしいようで、わたしだけが知っているたのしみのようで、すこしずるっこしてる気持ちになる。
いつもわたしは自分の好きな人を、なにかものとセットで記憶する癖がある。 ほんとうに驚くほど、必ず。
そういう意味では、とても身近な珈琲と紐付けられたら人は、どんな人なんだろうなあ、と先のことに思いを馳せてしまっては、切なくなってしまう。
きっとその人は、遠くへといってしまうのだろう。 そんなことしか思えない、わたしのこころの貧しさが憐れだ。