ゴホン


わたしは風邪を引かない。
年に1回、体調を崩せば良い方で、ほんとうに病院に行くことがない。

 

幼い頃は、具合が悪ければ、厳しい母親にやさしくされるのではないかとおもい、よく仮病をつかっていたことを思い出す。 ほんとうに具合が悪いときよりも、仮病のときのほうが多かったのではないか?とおもうほどだ。

 

唯一、年に1回ほんとうに病院にかかるのは、インフルエンザになったときだったようにおもう。 わたしは予防接種してもインフルエンザにかかってしまう子だった。理由はわからない。型の違いだろうか。
小学生の高学年の時点で、予防接種しても無駄だと悟った。 それをしなくなったら、逆にインフルエンザにかかりにくくなった。 おそらく、インフルエンザにかかった人との接触がめっきり減ったからなのだろうとおもう。 大学進学後は一度もかかっていない。

 

お酒を覚え、外へと出歩くようになり、仮病を使うこともなくなった。だから、わたしが家に篭るときはほんとうに具合が悪いときとなった。
そうすると、母に怒られるようになった。「自己管理できてないからよ」と。
こちら側は本気で滅入ってるというのに、泣きっ面に蜂のごとく母は追い討ちをかけてくる。 なんだかほんとうに心がしんどかった。
たくさん遊ぶとお金がなくなるし、コミュニティもある程度限定されていったのもあり、わたしは自分に無理を強いるような遊びはしなくなった。

 

そうなると、ほんとうに驚くほど体調を崩さなくなった。 去年の10月に卒論に必死になっていた頃に病院にかかったことしか覚えていない。
わたしががんばっていることを知っていた母は、そのときは真剣に心配してくれた。 泣きたくなるほどうれしかった。

 

わたしは病弱な子がまわりに心配されて、やさしくされているのが羨ましかったんだとおもう。 いまだに心の奥底では、羨ましいとおもっているに違いない。 ダサいから蓋をしてるだけで。
生まれもっての構ってちゃんなのか?とおもうと、ほんとうに絶望する。 がんばって隠して、そして永久的にそれが表に出なければ良いとおもうし、できれば構ってちゃんの性質が消えたら良いな、とつよくおもう。